離婚請求において、不倫をするなどして婚姻関係の破綻につき責任がある側を「有責配偶者」といいます。
では、有責配偶者からの離婚請求は認められるのでしょうか。
最高裁は、昭和62年9月2日の判決において、①夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んでいること、②その間に未成熟の子が存在しないこと、③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態におかれる等、離婚請求を容認することが著しく正義に反するといえるような特段の事情が認められない場合には、有責配偶者からの離婚請求が認められる場合もある(有責配偶者だから絶対に離婚が認められないわけではない)との判断を行いました。
①別居期間について
別居期間として「相当の長期間」とはどの程度の期間をいうのでしょうか。
裁判例の傾向をみますと、単純に年齢、同居期間と、別居期間を対比して「相当の長期間」を判断しているのではなく、配偶者へ誠意ある対応をしていたかなどの事情を総合的に考慮しているため、明確に「何年」という基準を読み取ることはできません。
一般には、同居期間がある程度の長さであれば、8,9年程度が一つの目安と考えられますが、その他の事情も考慮していく必要があります。
また、年齢、同居期間と対比しますので、同居期間が短ければ、これよりも短い期間でも「相当の長期間」と評価される可能性があります。
②未成熟の子について
未成熟の子とは、親の監護がなくては生活できない子をいいます。
未成年の子とイコールではありませんので、20歳を超えていても大学生は未成熟の子と評価される可能性があります。
③過酷条項
夫婦それぞれの収入、生活状況、婚姻費用の支払いの有無、財産分与や慰謝料としてどの程度の申出をしているかといった事情を考慮することになります。