離婚を考えているが、離婚した後、子どもの養育費はいつまで支払ってもらえるのかが気になる、という方は少なくないでしょう。
今回は、離婚後、養育費の支払い義務はいつまで存続するのか(支払い義務の終期)について解説します。
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養育費とは?
離婚する場合には、親権者として子どもを引き取る側(監護親)が、引き取らなかった親(非監護親)に対して養育費の支払いを求めるのが一般的です。
民法766条1項は、「父母が協議上の離婚をするときは、(中略)子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」と定めています。
ここでいう「子の監護に要する費用」というのが、養育費です。
子どもを育てるのにはお金がかかりますので、その費用を子どもを引き取らなかった側にも負担してもらう必要があるというわけです。
養育費について当事者間の協議がととのわないときや協議をすること自体ができないときは、家庭裁判所に決めてもらうことができます(民法766条2項)。
養育費の支払い義務の終期は「子が未成熟子ではなくなったとき」
では、養育費は、子どもが何歳になるまで支払われるべきものでしょうか?
かつては、民法766条が「子の監護に要する費用」を請求するものであるから、子が成年に達するまでに限定されるとする考え方(大阪高決昭57年5月14日家月35巻10号62頁)もありましたが、現在ではそのような考え方は一般的ではありません。
現在の一般的な考え方は、たとえ成年に達していても、「未成熟子」である限りは養育費の支払い義務が続くという考え方です。
なお、ここでいう「未成熟子」とは、単に子が現に経済的に自立していないという事実のみでは足りず、両親の経済状況や子が経済的に自立していない理由などを含む様々な事情のもとにおいて、一般的、社会的にみて子が経済的自立を期待されていないこと(経済的に自立しないことを許容されていること)を要すると解されています。
例えば、大学生は、成年に達していても、通常は「未成熟子」であると考えられます。
養育費の支払いは「満20歳まで」とすることが多いが例外もある
とはいえ、養育費について協議する時点では、子どもが将来のいつの時点で「未成熟子」でなくなるのか、特定が難しい場合もあります。
特に子どもが幼い場合には、将来大学に進学するかどうかなども予測が困難だというケースもあります。
そこで、家庭裁判所の調停では、そのような場合は、養育費の支払いの終期は「満20歳になる日の属する月まで」と取り決めるのが一般的です。
ただし、両親ともに子の大学進学を望んでいるような場合や、子が既に一定の年齢に達していて大学進学の意向・能力を有しているといった場合などでは、「満22歳になったあとの最初の3月まで」などと取り決めることもあります。
成年年齢の引き下げは「未成熟子」の判断には影響しない
ところで、法律の改正により、2022年(令和4年)4月1日から成年年齢が18歳に引き下げられました。
そうすると、「18歳になれば大人なのだから、養育費も18歳までで終わりとしてよいのでは?」とも考えられそうですが、そうではありません。
「未成熟子」であるか否かはあくまで経済的に自立することが期待できるかどうかということで決まるため、成年年齢の引き下げは「未成熟子」であるか否かの判断にはただちに影響するものではないからです。
法務省が示しているQ&Aでも、「養育費は,子が未成熟であって経済的に自立することを期待することができない場合に支払われるものなので,子が成年に達したとしても,経済的に未成熟である場合には,養育費を支払う義務を負うことになります。このため,成年年齢が引き下げられたからといって,養育費の支払期間が当然に『18歳に達するまで』ということになるわけではありません。例えば,子が大学に進学している場合には,大学を卒業するまで養育費の支払義務を負うことも多いと考えられます。」と記載されています。
まとめ
養育費の支払いの終期は、社会情勢に大きな変化がない限りは、今後も「満20歳まで」とするのが原則的なパターンと考えてよいでしょう。
ただし、子どもの年齢や進路に関する意向、両親が子供に受けさせたい教育の内容、両親の学歴や経済状況など、具体的な事情次第では、それとは異なる内容を取り決めるのが適切なケースもあります。
養育費についての疑問は、お気軽に弁護士にご相談ください。